BIMを動かす人・組織・情報

BIMを動かす人・組織・情報の基本

発信:連合会 BIM部会
目次
  1. 「BIM担当者に任せた」だけでは進まない
  2. BIMプロジェクトに関わる主体
  3. 役割は肩書きではなく「機能」で決める
  4. 企業のBIM推進とプロジェクトの実行は別物
  5. 目的から逆算する「BIMユースケース」
  6. モデルを構成する情報とその置き場所
  7. 情報の詳細度は「見た目」ではなく目的で決まる
  8. 情報共有を支える共通データ環境(CDE)
  9. BIM人材に必要な知識・技能
  10. この章で押さえること

BIMプロジェクトには発注者から施工者、維持管理者まで多くの主体が関わります。本記事では、BIMマネージャー・コーディネーター・モデラーという役割の考え方、企業とプロジェクトでの推進の違い、情報管理と共通データ環境の基本を解説します。

「BIM担当者に任せた」だけでは進まない

ある設計事務所で、BIMを扱える若手設計者一人にBIM作成を任せたところ、詳細度や表現の基準が決まらないまま面積表の作成や干渉確認の依頼が集まりました。誰がモデルの正確性を確認し、変更を判断するのかが決まっていなかったためです。

問題は担当者のスキル不足ではなく、役割分担とワークフローが決まっていなかったことです。関係者それぞれが何を判断し、確認し、利用するのかを明確にする必要があります。

BIMプロジェクトに関わる主体

建築プロジェクトには発注者、設計者、施工者、専門工事会社、維持管理者など多くの主体が関わり、他組織と情報を共有する際は、誰が何を作りどこまで責任を持つかを合意します。

主体主な役割
発注者・建物所有者事業目的・要求条件・必要な成果物を示す
意匠・構造・設備設計者要求条件を設計へ反映し情報を作成・調整する
施工者施工計画・施工図・製作・品質管理に情報を利用する
専門工事会社・メーカー詳細設計・製作・機器の情報を提供する
維持管理者・利用者運用・点検・修繕・更新に情報を利用・更新する
審査・検査機関法令等に基づき図書・情報を確認する

発注者もBIMプロジェクトの一員です。「BIMを使用すること」だけでは受注者は成果を判断できず、何に利用し何が必要かを発注者側で整理し、曖昧なら設計者側から活用範囲を提案します。

役割は肩書きではなく「機能」で決める

建築BIM推進会議のガイドライン第3版は「BIMマネージャー」「BIMコーディネーター」「BIMモデラー」の名称と役割を定義していますが、固定の職名や専任配置を求めるものではなく、一人が複数を兼ねることも複数人で分担することもあります。

BIMマネージャーは、BIM活用の目的、体制、情報管理、成果物の確認方針を整える役割です。発注者要求やBIM活用方針、BEP(BIM実行計画書:活用目的・成果物・役割分担・確認方法などBIM運用ルールを整理した計画書)、責任分担、CDE、品質確認、引渡し方針を具体化し、実務・技術・人材育成をつなぐ能力が重視されます。

BIMコーディネーターは、担当プロジェクトや分野でBIMの実行・調整を支える実務上のリーダーです。BEPに沿ってモデル連携、統合確認、課題管理を運用しますが、設計変更を独断で決めず、合意内容が反映されたか確認する立場です。作成チーム内でも進め方を整える取りまとめ機能が必要な場合があり、BIMコーディネーター、各分野の設計担当者、経験のあるBIMモデラーなどが担うことがあります。

BIMモデラーは、合意された方針に従ってモデル・図面・属性情報を作成する役割です。単なる入力作業者ではなく、建築要素の意味や設計意図を理解して反映します。

いずれの役割も設計責任・プロジェクト責任を置き換えません。設計判断は設計責任者、工程・費用管理はプロジェクト責任者が担い、問題を見つけた人と対応を決める人が異なる場合があることを曖昧にしません。

小規模組織では兼務できる

専任者を置けない小規模事務所では、プロジェクト責任者や設計者がマネージャー機能を、BIM担当者がコーディネーター・取りまとめ・モデラー機能を兼ねられます。兼務は問題ではありませんが、目的決定、情報作成、確認、設計判断、記録を残す機能は区別し、時間を置いて確認する、別の設計者がレビューするなど作成と確認を分ける工夫が求められます。

企業のBIM推進とプロジェクトの実行は別物

企業内のBIM推進は、一つのプロジェクトの完成だけが目的ではなく、複数プロジェクトで再利用できる環境を整え組織の能力を高める活動です。方針・標準・環境・テンプレート・人材育成・評価改善を扱い、担当者任せでは継続しないことがあるため経営層が優先順位と投資を確保します。専門部署が集約する「中央支援型」、各部門が兼務する「分散型」、組み合わせる「連携型」があります。

一方プロジェクトでは、モデル作成前に活用目的、成果物、作成範囲、命名方法、確認・承認方法をBIM実行計画書等に整理します。小規模なら1〜2ページの簡易な計画書でも合意できれば有効です。役割分担表では実施する人、確認する人、最終判断・承認する人を区別し、キックオフで共有します。自己確認に加え、チーム確認、分野間確認、設計判断の段階を分けます。

目的から逆算する「BIMユースケース」

BIMユースケースとは、BIMを何に使うかを具体的に表したものです。「BIMを導入する」は方針でありユースケースではなく、「意匠・構造・設備モデルを統合し干渉を確認する」のように行為と目的が分かる表現にします。目的、利用場面、必要な成果、必要な情報(形状・属性・精度)、作成・確認方法の順で逆算します。「設備干渉を減らす」が目的なら、家具の属性より梁・ダクト・配管の位置が重要です。すべて実施すると負担が大きくなるため、価値や人材・時間の確保で優先順位を決め、課題発見数などの指標で成果を測ります。

モデルを構成する情報とその置き場所

BIMモデルは形状情報・属性情報に加え、要素同士の関係性(どの階・部屋・系統に属するか等)も重要です。すべてを一つのファイルに入れる必要はなく、要素IDと外部データベース等を関連付けて管理する方法もあり、情報ごとに誰が入力し、いつ確定し、誰が変更・確認できるかを決めます。BIM情報はソフトの3Dモデルだけでなく、IFC等の交換モデル、CDE上の文書、課題管理システムなど複数の場所に分かれて存在し、重要なのは正しい所在を明確にすることで、建物・階・部屋・要素等を一意に識別できることが基盤になります。

情報の詳細度は「見た目」ではなく目的で決まる

企画段階では規模・面積が分かればよく、実施設計や施工では納まりの詳細が増え、維持管理では精密な形状より識別番号・型番・点検周期が重要になる場合があります。詳細度を考える用語がLOD・LOIで、LODはモデル要素の形状や確定度などモデルの発展段階、LOIは属性情報の内容や充実度を表す考え方です。LODには形状の情報量を指す意味と検討の到達段階を指す意味があり、詳しくは第4章で扱います。定義や略語の展開は国やガイドラインで異なる場合があるため、数値だけで判断せず何を表し、何に使い、何を確定しているかを記述します。

情報共有を支える共通データ環境(CDE)

CDE(Common Data Environment:共通データ環境)は、プロジェクトや資産の情報を収集・管理・共有するための合意された情報源で、単なる共有フォルダの製品名ではなく、保存場所、命名方法、状態、版と履歴、確認・承認手順、アクセス権限を組み合わせた仕組みです。教材ではCDE内の情報状態を「作業中」(確認前)「共有」(調整用)「公開」(承認済み)「アーカイブ」(履歴保存)の四つに整理します。日付が新しいことと正式な成果物であることは同じではなく、状態・版・承認者を確認し、権限・版・状態の管理とバックアップ、機密情報の分離といったセキュリティ管理も欠かせません。

BIM人材に必要な知識・技能

BIM人材には、ソフトウェア操作に加え、建築実務、情報マネジメント、プロジェクト調整、対人・組織能力が必要で、役割ごとに重視される技能は異なります。必要技能と習熟度を一覧化する「スキルマトリックス」は、不足技能の把握や教育計画に活用できます。教育は目的理解から基本操作、実務モデル作成へと段階的に進め、導入で生じる不安には負担軽減など支援も必要です。

この章で押さえること

  • BIMプロジェクトには発注者から維持管理者まで多様な主体が関わり、発注者自身も活用目的や成果物を示す役割を担う
  • BIMマネージャー・コーディネーター・モデラーは固定の職名ではなく機能であり、業務・権限・責任を具体的に定める
  • 小規模組織では兼務してよいが、「目的決定」「情報作成」「確認」「設計判断」「受け渡し記録」は区別する
  • 企業内のBIM推進(標準・教育・環境整備)とプロジェクト内のBIM実行は別の活動として捉える
  • ユースケースは利用目的から逆算して決め、増やしすぎず優先順位と効果測定を行う
  • 情報の詳細度(LOD・LOI)は見た目ではなく利用目的・段階・利用者で判断する
  • CDEは保存場所だけでなく、情報の状態・版・承認・権限・履歴を管理する仕組みとして整える
出典:
『建築BIMマネジメントの実践(基礎編)』第2章
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