BIMマネジメントの実践

計画を動かすBIMマネジメント実践

発信:連合会 BIM部会
目次
  1. BIMマネジメントは実務のつなぎ役
  2. 開始判定と未決事項の管理
  3. キックオフでの合意とBEPへの反映
  4. 進捗・課題・変更の管理
  5. モデルレビューと品質管理のタイミング
  6. BIM調整会議の運営
  7. 関係者調整
  8. 設計変更の扱いと履歴
  9. 成果物確認と引渡し
  10. 維持管理への引継ぎ(静的情報と動的情報)
  11. 振り返りと社内標準への反映
  12. この章で押さえること

第4章で作った計画を、プロジェクトの日常業務でどう動かすかを扱う章です。第2章・第4章の役割や計画づくりの再説明ではなく、開始判定、キックオフでの合意形成、課題・変更の管理、モデルレビューと品質管理、関係者調整、成果物の引渡し、維持管理への引継ぎ、振り返りまでの一連の実務の流れを確認していきます。実務担当者向けに要点を絞ります。

BIMマネジメントは実務のつなぎ役

あるプロジェクトでは、統合モデルの作成や干渉チェック、モデルレビューが定期的に行われ、課題リストも共有されていました。それでも、どの課題を設計段階で解決し、どれを施工段階へ引き継ぎ、どれを発注者と協議すべきかが整理されず、判断が止まりました。課題を発見する仕組みはあっても、意思決定・責任分担・成果物確認・引渡しにつなぐマネジメントが不足していました。

BIMマネジメントとは、モデルを作る人だけでなく、BIMで何を判断し合意し、何を次工程へ渡すかを管理する実務です。本章は役割の定義(第2章)や計画の作り方(第4章)の再説明ではなく、計画・合意、日常運用、専門判断・承認、作成・情報更新の四つが課題・変更・成果物を介してつながる状態を扱います。

開始判定と未決事項の管理

計画が運用を開始できる状態かを、目的・成功基準、EIR(発注者情報要件)の未確認事項、体制、成果物区分、CDE(共通データ環境)の試行状況、命名規則等、品質確認体制、引渡し条件で確認します。

問題は未決事項の放置です。未決事項は課題リストと別に「決定事項・未決事項一覧」で管理し、決定理由・担当・期限を明記します。維持管理引継ぎ属性は基本設計完了前、IFC提出範囲は実施設計前半など、期限を紐づけます。

キックオフでの合意とBEPへの反映

BIMキックオフでは、BIM活用目的、成果物の正本・参考区分、役割分担、モデル受け渡し方法、CDEの権限・承認フロー、課題管理、品質確認、変更管理の扱いを確認します。合意事項は議事録だけでなく、BEP(BIM実行計画書)や責任分担表へ反映し、会議の合意とBEPがずれないようにします。

次の項目は曖昧なまま進めると手戻りが大きくなるため、合意せずに進めてはいけません。

  • 図面とBIMモデルの優先関係、IFC提出範囲
  • 維持管理へ引き継ぐ属性、設計BIMと施工BIMの責任境界
  • CDEの公開状態にあるデータの扱い、モデル修正の担当者と完了条件

進捗・課題・変更の管理

BIM進捗はモデルの入力量だけでは判断できません。モデル進捗・情報進捗・確認進捗・課題進捗・情報状態から見ます。課題リストの状態は、新規、対応中、確認待ち、完了、保留、引継ぎの6区分で明確にします。

発注者要求や設計変更時は、BIMモデルだけを修正せず、図面、属性一覧、課題リスト、BEP、責任分担表、成果物一覧、議事録も合わせて更新し、影響範囲を確認して更新者を決めます。

モデルレビューと品質管理のタイミング

モデルレビューは単にモデルを見る会議ではなく、設計判断、分野調整、情報確認、品質確認、引渡し確認が目的です。品質確認は提出前だけでなく節目ごとに行います。

タイミング主な確認内容
キックオフ後テンプレート、座標、命名規則、CDE
基本設計中階、部屋、主要構造、設備スペース
実施設計中図面整合、属性、干渉、成果物形式
施工引継ぎ前IFC、図面、未解決課題、利用範囲
竣工引継ぎ前竣工情報、設備属性、台帳連携

不備は悪いことではなく、チェック結果を人の評価にせず、ルール・テンプレート・教育・確認タイミングの改善へつなげることが大切です。同じ不備が繰り返される場合はBIMマネージャーが運用ルールを見直します。

BIM調整会議の運営

BIM調整会議は、前回課題の完了確認、未完了理由の確認、新規課題の確認、重要度・担当者・期限の設定、次回提出モデルの確認、合意・未決事項の確認の順で進めると整理しやすくなります。

BIMコーディネーターは、統合モデル、課題リスト、前回からの変更点、重要課題のビュー、未決事項一覧、次回提出モデル一覧を会議前に準備します。会議後は議事録・課題リスト・BEP・CDE上の情報状態を更新し、後から確認できる形で記録を残します。

関係者調整

発注者はBIMモデルを見て判断する立場になることがある一方、細部まで把握しているとは限りません。BIMマネージャーは、判断したいこと、正式に受領する成果物、維持管理で使いたい情報、モデルの利用範囲と責任境界を確認します。

設計者間では、梁せい、天井高さ、設備ルートなど分野間の判断事項の優先順位を明確にします。設計判断は各分野責任者やプロジェクト責任者が行います。施工者へ引き継ぐ場合は目的の違いを説明し、利用する情報、再作成する情報、変換できない情報、未解決課題を分けて共有します。

設計変更の扱いと履歴

設計変更は形状の変更だけでなく、部屋名、面積、仕様、設備機器、点検対象、成果物、課題、承認状態など関連情報の変更を伴います。変更理由、影響範囲、更新者、確認者、承認者、CDE上の情報状態、維持管理への引継ぎ要否を確認します。

CDEの情報状態は、ISO 19650の「作業中」「共有」「公開」「アーカイブ」と整合を図り、正式な成果物や判断根拠となる情報は承認のうえ公開状態にあることを確認します。変更前の判断や履歴も残し、変更理由、承認者、反映先の成果物が分かるようにします。

成果物確認と引渡し

まず成果物一覧を作成します。ガイドライン第3版は、PDF図面、設計BIMデータ、確認申請BIMデータ、完成BIMデータ、完成施工BIMデータ、維持管理・運用BIMデータ、課題リストなどを共通言語として整理していますが、一律に納品するものではありません。特に完成施工BIMデータと維持管理・運用BIMデータは、利用目的と費用対効果を確認し、別途業務・別途契約とする場合があります。

引渡し前には、成果物範囲、ファイル名・改訂番号、情報状態、図面整合、属性、未解決課題、利用条件、権利・契約(二次利用、守秘義務、免責、費用負担等)を確認します。提出と受け手が利用できることは同じではなく、受領確認と利用条件の明示が重要です。

維持管理への引継ぎ(静的情報と動的情報)

竣工時に急いで維持管理情報を集めても間に合わないため、設計段階からどの情報を使うか決めておく必要があります。ただし維持管理段階でのBIM活用は建物用途、発注者の管理体制、既存の台帳・施設管理システムで異なるため、本章では一律な手順ではなく、確認しておくべき情報引継ぎの考え方として扱います。

維持管理情報は性質で置き場所を使い分けます。

種類管理方法
静的情報設置場所、製品名、メーカー、型番、仕様、保証BIMモデル、属性一覧、台帳
動的情報点検履歴、故障履歴、修繕記録、運転データ維持管理システム、外部DB
文書情報取扱説明書、保証書、写真、検査記録文書管理、リンク、CDE

全てをBIMモデルに入れず、発注者の台帳管理項目を確認し、BIM側の属性項目を決めます。

振り返りと社内標準への反映

評価では、うまくいったことだけでなくうまくいかなかったことも記録します。目的達成、作業量、品質、連携、引渡し、標準化の観点で確認し、つまずきやすい問題は個人や組織の評価とせず、計画・標準・教育へ戻す改善点として整理します。

学びは、BEPテンプレート、命名規則、モデル入力ルール、IFC書き出し設定、課題リストの分類、品質チェック項目、教育資料へ反映します。BIMマネジメントは、目的設定、計画、運用、確認、引渡し、振り返り、標準化という循環で改善する実務です。

この章で押さえること

  • 計画・合意、日常運用、専門判断・承認、作成・情報更新を、課題・変更・成果物でつなぐ。
  • 運用開始前に、目的、EIR未確認事項、体制、成果物区分、CDE、ルール、品質確認、引渡し条件を確認し、未決事項は担当・期限つきで管理する。キックオフの合意は議事録だけでなくBEPへ反映する。
  • 進捗はモデル量だけで判断せず、情報・確認・課題・情報状態を合わせて見て、品質チェックの不備は個人評価にせずルール・教育の改善につなげる。
  • 設計変更は図面・モデル・属性・課題・BEP・成果物一覧・議事録まで連動更新し、履歴も残す。
  • 維持管理情報は設計段階から検討し、静的・動的・文書情報を性質に応じて分ける。
出典:
『建築BIMマネジメントの実践(実務編)』第6章
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